コラムColumn

速さよりも、美しさを選んだ ~2010アルピナB9 3.5(ドイツ)1985年~

ある日、ふとしたきっかけで出会った。
色と形に惹かれ、深く考えずに買ってしまった。そんな一台が、アルピナB9。

オートマ車で、普通に乗るぶんには何の問題もない。むしろ、これまでの車と比べると乗りやすさまで感じる。

当時新しいBMWも所有していたが、気まぐれにこの車を動かすことが何度かあった。
けれど、オートマ車だとどうしても“面白み”が薄い。なんというか、刺激が足りない。
少し楽をしようと思って手に入れたはずが、どこか物足りなさを感じていた。

アルピナブルーの深い色合いが好きだった。
ボディのラインに走る“ALPINA”の文字が、誇らしげで、どこか特別な存在感を放っていた。
BMWがつくった車というだけで、当時はそれだけでも十分に憧れの対象だった。
そのロゴが持つ品格のようなものに惹かれたのだと思う。

けれど、走り出してみると、思っていたよりも速くはなかった。
オートマゆえの穏やかさがある一方で、心を揺さぶるような刺激は少ない。

そんなジレンマを感じながら、結局、一度乗ったきりで満足してしまった。
当時を振り返ると、「普通に走る」だけでは自分の中で「クルマを楽しむ」ことにはならなかったのだろう。

刺激がなければ、面白くない。
そんな思いを、改めて感じさせてくれた車だった。
惹かれて、手に入れて、そして少し距離を置く。
その一連の流れさえも、アルピナブルーのように静かで、どこか上品な記憶として残っている。