コラムColumn

最後の“フェラーリらしさ”を感じた一台 ~2005フェラーリ328GTS(イタリア)1987~

フェラーリと聞けば、誰もが「スーパーカー」の象徴を思い浮かべるだろう。

だが、私にとって1987年式のフェラーリ328GTSは、ちょっと違う意味を持つ車だった。

 

フェラーリ328GTSは「ピッコロ・フェラーリ」と呼ばれるほどコンパクトな一台で、テスタロッサと同時代に生まれた。

迫力満点のテスタロッサとは対照的に、328はスリムで軽やか。小さいがゆえに驚くほどビュンビュン走り、面白さも十分あった。ただ、パワーはそこまで強烈ではなかったのを覚えている。

 

当時の私は、スペックやブランドで車を選んでいたわけではなかった。
基準は担当の営業マン。若くても私の要望をくみ取り、誠実に耳を傾けてくれる姿に惹かれて、ずっと同じ営業マンから車を買っていた。

だから決断もいつも即決。迷うくらいなら買わない、という性格だったので、328GTSもその場で即決した一台だった。不思議なもので、その営業マンが辞めてからは同じ店では買わなくなった。結局、車そのものというよりは、「人」で選んでいたのだと思う。

当時はそこまで気づかなかったが、振り返れば328GTSは「最後のフェラーリ」と呼べる存在だった。本来のフェラーリの良さが十分に出ている。

今の車は、完全にコンピューター化されており安全装置がついていてだれでも安心して運転することができる仕様。でも、このときのフェラーリにはそんなものは存在せず、まさにドライバーの腕が試される。

フェラーリのシリーズとしては355までは「自分の実力」で走らせる感覚があり、それが私が好きな「フェラーリらしさ」だった。

この時手にした328の外観の曲線美はまさに唯一無二。117クーペ以上に美しいと感じた。内装はプラスチック製で少しチープに見え、さほどビンテージ感はなかったものの、それでもフェラーリの魂が宿っていたと思う。今思えば、もう1つ前のシリーズ「308」も手にしていれば、もっと“昔ながら”を楽しめたのかもしれない。

328に乗ったのはわずか1年ほどだったが、その間は気軽に街を駆け抜ける楽しさがあった。小さく扱いやすいからこそ、思い立ったらすぐに走り出せる「日常的なフェラーリ」だった。あの頃は、流れで買った一台にすぎなかったが、今思えば328こそが、私の中のフェラーリ史の中で特別な位置を占める一台だったのだ。