コラムColumn
刺激的で少しほろ苦い想い出~フェラーリ348GTS(イタリア)1992~
2011年に手に入れた「フェラーリ348GTS」。
名車として名高い「フェラーリ328」の後継モデルだ。
デザインは引き続きピニンファリーナのレオナルド・フィオラヴァンティが手がけているのだが、先代に比べるとぐっと近代的な見た目になった。
一番の特徴は、ボディサイドにある大きなエアインテークだろう。当時の流行したテスタロッサのようなフィン付きのデザインになり、テールランプも伝統の丸型4灯から、ルーバーに隠れた長方形のタイプへと変わった。テスタロッサを少しコンパクトにしたようなその姿は、今思い出しても惚れ惚れするほど格好良かった。
私がフェラーリ328を所有していた話は以前執筆したが、そのときにお世話になった営業マンが非常に素晴らしい方で、彼への信頼があったからこそ、再度購入を決意した。
もうひとつ、買い替えの動機は「音」だった。
当時は空前のF1ブームで、フェラーリオーナーたちの間では「いかに愛車をF1のような高音で鳴かせるか」が流行っていた。みんなこぞって特注のマフラーを作って装着していた。
残念ながら、328の構造ではどうしてもあの理想のF1サウンドが出せなかった。
対して348は、マフラーを替えればあの突き抜けるような快音を奏でてくれる。その音をどうしても手に入れたくて、私は348GTSへの乗り換えを決めたというわけだ。
念願のサウンドを手に入れた私は、その音に酔いしれて、とにかくエンジンを回しまくった。体を通じて響くエンジンの音は最高に気持ちよくて、ついつい右足に力が入ってしまったのを今でも覚えている。
ところが、そんな無理がたたったのか、ある日ついにエンジンを壊してしまった。
届いた見積書を見て、目玉が飛び出そうになった。修理代は、なんと250万円…。
それだけの大金を払って直した直後は、「また走れる」という喜びがあったが、今の車と違ってしっかりとした「慣らし運転」が欠かせない。エンジンが馴染むまで、丁寧に、根気強く対話するように乗ってあげないと、自分好みのまわりかたをしてくれない。若い頃ならその手間さえも楽しめたのかもしれないが、このときはそんな余裕はなかった。
今は完璧な状態なので、次のオーナーに任せようと思い始めて、ついに手放した。
最終的にはガレージで眠る時間が長くなっていった348GTSは、私に最高の興奮さも教えてくれた一台だった。

