コラムColumn

「かわいさ」が照れくさくなった~2012BMWミニクーパーコンバーチブル(ドイツ/イギリス)2007~

もともとMINIという車は、1959年にイギリスで生まれた小さくて愛らしい車だ。それが1994年にBMWの傘下に入り、2001年から「BMW MINI」として新しいかたちで世に出た。

丸いヘッドライト、コロンとしたボディといった、親しみやすいデザイン。生産はイギリス・オックスフォードの工場が担っており、ドイツの技術とイギリスのセンスが合わさったブランド。

そのMINIのコンバーチブル(=屋根が開くタイプ)に乗っていた時期がある。

オートマ仕様ではなくマニュアル仕様を選んだが、これが正解だった。

MINIのマニュアルは、とにかく乗っていて楽しい。ハンドルを切るとすっと向きが変わり、ギアを替えるたびにエンジンの声がちゃんと聞こえる。屋根を開ければ風が入ってきて、なんとも気持ちがいい。晴れた日には開けて、ちょっと肌寒くなったら閉めて、また信号待ちで開けて…。そんな気まぐれを気軽に楽しめる車だった。

色はオレンジのメタリック。これがまた、自分でも気に入っていた。MINIってカラーバリエーションが豊富で、個性的な色を選べるのも魅力のひとつなのだが、あのオレンジは街なかでもよく目立って、乗るたびに気分が上がった。そうして約1年、それなりに乗り回して楽しんでいた。

ある日、ガソリンスタンドに寄ったとき、アルバイトの女の子が給油しながら『わあ、かわいい車ですね』と言ってくれた。素直に嬉しかったのだが、ふと我に返ってしまった。自分は50代だ。この年齢で『かわいい』車に乗っていていいんだろうか、と。

それまで何も考えずに楽しんで乗っていたのに、その一言で急に恥ずかしくなってしまった。自分でも不思議なくらい、そのひと言がずっと頭の中に残った。『かわいい』という言葉が悪いわけでは全然ない。でも50代の自分が『かわいい』と言われる車に乗っている姿を、ちょっと客観的に見てしまったというか。それからというもの、不思議と乗る回数が減っていった。

気に入っていた車だったし、楽しかったのは本当だ。マニュアルの手ごたえも、オレンジの色も、屋根を開けたときの風も、全部好きだった。

でも「我に返る」というのはこういうことなんだな、と思った出来事だった。次は何も考えずに、ただ乗りたいと思う車を選ぼう。そう思いながら、手放した。